・裂孔原性網膜剥離

網膜に穴(裂孔)ができることによって生じる網膜剥離です。 主に、20歳前後の近視が強い人に起こるタイプ(格子状変性内の円孔による裂孔原性網膜剥離)と、50-60歳代で起こる硝子体の加齢性変化(後部硝子体剥離)に伴い起こるタイプ(弁状裂孔による裂孔原性網膜剥離)があります。弁状裂孔による裂孔原性網膜剥離は進行が速いので、視機能が維持されていれば、視力低下を防ぐために緊急的な治療が必要です。ごく狭い範囲の網膜剥離の場合にはレーザー治療が可能ですが、基本的には手術が必要です。 手術には目の外から治す強膜内陥術と、目の中から治す硝子体手術があり、年齢や裂孔の位置、目の状態により手術を選択、あるいは組み合わせて治療を行います。 目の中にガスやシリコーンオイルといったタンポナーデ物質を入れた場合には術後にうつぶせ(腹臥位)での安静が必要です。

当院では限局性の裂孔原生網膜剥離に対してレーザー治療が可能です。広範囲の裂孔原生網膜剥離など、緊急・準緊急的な硝子体治療を必要とする場合は、提携医療機関へ紹介します。

 

・黄斑円孔

網膜の中央(黄斑)のさらに中心(中心窩)に丸い穴(円孔)があいた状態です。 硝子体の収縮に伴い網膜に接線方向の力が加わることで、すきまを生じ、徐々に拡大していくことで、歪みや視力低下を引き起こします。 初期では自然閉鎖の可能性がありますが、経過観察でも自己閉鎖が得られない例や進行例に対しては手術が必要です。硝子体を切除、正常網膜の表面に位置する膜(内境界膜)を剥離し、手術用のガスを注入します。ガスの浮力により円孔の閉鎖を図りますので、術後にうつぶせ(腹臥位)が必要です。

当院では黄斑円孔に対して日帰り硝子体手術が可能です。術後長期の腹臥位(うつ伏せ)を必要とする場合や入院希望の方は、提携医療機関へ紹介します。

 

・黄斑前膜(黄斑上膜/網膜前膜/網膜上膜)

網膜の中央(黄斑)の表面に異常な膜が生じた状態です。 異常な膜が黄斑の形をむくませたり、歪めたりするため、物の大きさが大きく(大視症)、或いは小さくみえたり(小視症)、歪んで見えたりします(歪視)。 進行すると視力低下を引き起こします。治療は手術により異常な膜を取り除くことです。視力低下がある症例や大視症、小視症、歪視症などの自覚症状が強い場合には手術が必要です。

当院では黄斑前膜(黄斑上膜/網膜前膜/網膜上膜)に対して日帰り硝子体手術が可能です。

 

・加齢黄斑変性

網膜の中央(黄斑)の最下層にある網膜色素上皮が傷害され、異常な血管(脈絡膜新生血管)が生じた状態です。新生血管からの漿液成分や出血成分が異常に漏れ出すことで、黄斑の形をむくませたり、歪めたりするため、物の大きさが大きく(大視症)、或いは小さくみえたり(小視症)、歪んで見えたりします(歪視)。 進行すると視力低下を引き起こします。通常、目への局所注射(抗VEGF薬)で治療します。薬剤の効果は一時的ですので、進行を予防のためには、定期的な注射の継続が必要です。新生血管が破綻して眼球内や網膜に大きな出血を起こした際には、硝子体手術などの手術加療が必要になる場合があります。

当院では加齢黄斑変性に対する抗VEGF薬剤の硝子体注射や、加齢黄斑変性に併発した硝子体出血に対して日帰り硝子体手術が可能です。

 

・網膜静脈閉塞症

網膜全体あるいは部分的に出血と毛細血管の閉塞を生じます。網膜静脈閉塞による網膜出血は自然に消退しますが、一方で毛細血管の閉塞は範囲が広いと硝子体出血や緑内障などの合併症をきたす可能性があります。そのため毛細血管の閉塞範囲が広い場合には、眼内に新生血管が生じないようにレーザー治療が必要です。

当院では網膜静脈閉塞症に対してのレーザー治療や、網膜静脈閉塞症に併発した硝子体出血に対して日帰り硝子体手術が可能です。

・網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫

網膜静脈閉塞症が原因で網膜の中央(黄斑)にむくみが生じた状態を指します。視力低下をはじめ、歪みや色覚異常などの症状も生じ得ます。目への局所注射(抗VEGF薬やステロイド薬など)やレーザーで治療します。

当院では網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に対して抗VEGF薬剤の硝子体注射が可能です。

・網膜細動脈瘤破裂

高血圧によって生じた網膜の細動脈瘤が破裂し出血した状態を指します。網膜の下、中、上など出血した場所によって症状や治療が異なります。視力低下、歪み、視野障害、飛蚊症などの症状が生じ得ます。レーザー、血腫移動術、硝子体手術などの手術が必要になる場合があります。

当院では網膜細動脈瘤に対してのレーザー治療や、網膜細動脈瘤破裂に伴う硝子体出血に対して日帰り硝子体手術が可能です。

 


専門用語の解説

1. 網膜(もうまく)
目の奥にある膜状の組織で、光を感知し脳に視覚情報を送る役割を持ちます。カメラでいう「フィルム」のような部分です。

2. 硝子体(しょうしたい)
目の内部を満たしている透明なゼリー状の物質で、目の形を保つ役割があります。加齢や病気で濁ることがあります(硝子体混濁)。

3. 黄斑(おうはん)
網膜の中心部で、細かいものを見たり色を識別したりするのに重要な部分です。ここに異常が起こると歪で見えたり、ものが大きく見えたり、中心が抜けたように見えにくくなります。

4. 硝子体手術
網膜や硝子体の病気を治療するために行う手術。小さな器具を使って硝子体を取り除き、網膜の病気を治療します。

5. 硝子体注射(しょうしたいちゅうしゃ)
加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫などの治療に用いる注射。目の中に直接薬を注入し、病気の進行を抑えます。


Q&A よくある質問

Q1. 網膜剥離は突然起こるのでしょうか?
A1. 網膜剥離は徐々に進行することもありますが、突然視野の一部が見えなくなったり、黒いカーテンのようなものがかかることがあります。飛蚊症(黒い点が見える)や光視症(光が走るように見える)が前兆となることもあります。

Q2. 硝子体手術は痛いですか?
A2. 硝子体手術は通常、局所麻酔で行われます。手術中の痛みはコントロール可能なことがほとんどです。局所麻酔で意識がありますので、もし痛みを感じた際には、申告してください。また術後に痛みを感じることがありますが、痛み止めの内服などで収まることが多く、数日で落ち着きます。

Q3. 加齢黄斑変性は治りますか?
A3. 完全に治すことは難しいですが、硝子体注射などの治療で進行を抑え、視力を維持できる可能性があります。早期発見・早期治療が重要です。

Q4. 網膜静脈閉塞症は予防できますか?
A4. 高血圧や糖尿病があると発症リスクが高くなるため、生活習慣の改善が重要です。適度な運動やバランスの良い食事、定期的な健康診断が予防につながります。

Q5. 硝子体注射は何回受ける必要がありますか?
A5. 病気の種類や進行度によりますが、通常は1回の注射で終わるわけではなく、定期的な注射が必要になることが多いです。硝子体注射は薬剤が高額なので、金額面の相談もしながら治療を進めていきます。